※書き足りない事があったため2014/12/22に記事を加筆修正しました。
「趣味は読書です」
という言葉をめっきり聞かなくなりましたね。まあ前からそんな言葉は中々聞きませんけど、最近更に聞く事がなくなってしまった感があります。
趣味は読書って言うと「じゃあ何読んでるの?」って聞かれるからですかね。就活とかでも「趣味はマリンスポーツです」とか答えた方が良いのかしら。まあ実際マリンスポーツは楽しいから否定はしないけれど。
私は意識的に読書する事から世界が開けていって、何だかよく分からないものの集合体だった現代社会が少しずつ理解できるようになっていきました。それは勉学によって得られる知識とは全く異質で、より色鮮やかで楽しい知的視野が頭の中に作られてゆくような面白さが常にありました。今でもそれが楽しいから色々な分野の色んな本を読みます。
しかし結構な頻度で周りの人からは「何でそんなに本を読むの?」とか「お前がそんなに本を読み続けて積み上げてく奴だとは知らなかった」とか言われます。そこで、私がどうしてここまで本を読むようになったのかを簡単に振り返って、私の読書遍歴と一緒に私を本の世界に引き込んだ面白い作品を紹介してみようと思います。
幼い頃の私には読書の習慣なんてこれっぽっちもなく、父は「忙しいから読まなくなった」と言うし、母は元からかなり反知性主義的な人物だったため読書習慣なんて微塵も存在していませんでした。読んだところでかいけつゾロリやら椋鳩十の動物小説ぐらいなもので、真面目に文章を追って本を読むという意味ではハリー・ポッターシリーズぐらいでしたが、それすらも「謎のプリンス」以降は親の命令で購入が禁止されてしまったため、未だに「炎のゴブレット」までしかあらすじを知りません。
かいけつゾロリのドラゴンたいじ (1) (かいけつゾロリシリーズ ポプラ社の小さな童話)
- 作者: 原ゆたか
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 1987/11
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- 作者: J.K.ローリング,J.K.Rowling,松岡佑子
- 出版社/メーカー: 静山社
- 発売日: 2002/10/23
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まあ極めて貧困な読書しかしてこなかった私に転機が訪れたのが中学二年のころです。後々東大生となる某友人が片手で新書をパラパラ読んでいて、その姿が知的で超クールで超カッコいい!と子供心に思って、最初はそれを真似する所から始めました。因みにその某友人が読んでいたのが当時話題になっていた藤原正彦の「国家の品格」。
そこから意識して本を読もうと自分で色々な本を探して回って、本屋で色んな本を新刊で買いあさりました(当時はまだブックオフの存在を理解していなかった)。新刊で本を10冊ぐらい買っては読み、買っては読みを繰り返していたら、まあ当然の話ですが母と喧嘩になりました。うず高く積みあがってゆく本の山に母は顔をしかめていたのですが、私が父に連れて行ってもらった家具店で本棚を一つ買うという決断をしたら烈火の如く怒り始めました。それ以降今に至るまで「本棚問題」という意味不明な問題がウチの家には根深く存在しています。
まあそんな事は知ったことではありません。反知性主義に一々付き合ってやる必要性など微塵も感じていなかった私は、それ以降も湯水の如く金を使って本を買いまくりました。まあ親の金をすごい勢いで本屋に突っ込んでしまった事は反省していますが、それが無ければ読書習慣も身に付かなかったと思います。正直言って学校の図書室にはかび臭い古典や謎の図鑑とかばかりで、面白いものと言えばブラックジャックと火の鳥ぐらいしか無かったので、瞬く間に読みたい本を外に買出しに行かなければならなくなったのです。
中学生なので、分かりやすく面白いライトノベルにハマるのが最初でしょう。私もご多聞に漏れず最初に手に取った長編ファンタジー作品は「灼眼のシャナ」でした。
でもそれで終わる私ではありませんでした。父が神林長平の「今宵、銀河を杯にして」を愛読しており、「戦闘妖精・雪風」のファンだった事から度々「戦闘機が意思を持ってる」だとか「人工頭脳が人間を超える」とか意味不明なヨタ話を聞かされており、その影響で私の頭の中にはSFの素養が詰め込まれていたのでしょう。ごくごく最初期にアレステア・レナルズの「火星の長城」を読み始めました。
火星の長城 (ハヤカワ文庫 SF レ 4-3 レヴェレーション・スペース 1)
- 作者: アレステア・レナルズ,中原尚哉
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/08/25
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この「火星の長城」が私にとって大当たりでした。荘厳ながら冷酷で暗い宇宙観、マッドネスだとしか思えないような爛々たる輝きを放つ未来のテクノロジーの数々、拡張された人類の姿、そして科学技術でゴテゴテになるまで作り変えられてもそれでも意思を失わない骨太な登場人物。ここからSFにドハマりして、未だにアレステア・レナルズの作品はずーっと読み続けています。「量子真空」はあのエンディングまで含めてすごく好き。
- 作者: アレステアレナルズ,鷲尾直広,中原尚哉
- 出版社/メーカー: 早川書房
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そこからしばらく海外のSFや海外のファンタジーを読み漁っていて、その中でも未だに読み続けている傑作が「クシエルの矢」でした。
案の定表紙の美麗なイラストに惹かれて手に取ったのですが、これがまあ面白いこと。主人公が美少女娼婦という強烈な設定、知略謀略、時には自分の身体を使った色仕掛けまで含めて貴族同士の争いを潜り抜け、異民族まで巻き込んだ国家間の歴史が大規模に展開してゆくのは本当に面白いです。
それと同時期にやっと日本のSF作家に手を出して色々読み始めました。実は神林長平の著作も幾つか読んだんですけど、自分で組み立てた設定や世界観を自分で粉微塵になるまで粉砕する作風がどうにも受け入れられず、日本のSF作家はしばらく敬遠していました。
その苦手意識を真っ向から打ち破る傑作が「マルドゥック・スクランブル」でした。
マルドゥック・スクランブル The 1st Compression 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)
- 作者: 冲方丁
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/10/08
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これもまた性懲りも無く少女娼婦が主人公ですが、既存のテクノロジーの延長線上として提案される奇抜で斬新なSFの世界観、奈落の底に叩き落された主人公達が魂の再生を求めて熱く熱く戦い続けるストーリー、そしてカジノという珍しい舞台で繰り広げられる恐ろしいほど緻密な頭脳戦、何もかもが計算され尽くしているような冷徹さと熱い人の意思が同時に内包されている作品でした。これが大当たりで冲方丁の作品は今に至るまでずーっと読み続けています。
で高校入試が終わったあたりでしたか、また冲方丁の作品で「オイレンシュピーゲル」に出くわしてしまって、もう完全に冲方ワールドから抜け出せなくなる程の冲方ファンになりました。
オイレンシュピーゲル壱 Black&Red&White (1)(角川スニーカー文庫 200-1)
- 作者: 冲方丁,白亜右月
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2007/01
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尚この「オイレンシュピーゲル」については、ライトノベルながら私の人生に甚大な影響を与えた作品で、最早ほとんど私のバイブルと化しています。数えきれない程の勢いで再読しまくっており、もう初期に買った本もボロボロになってきました。そろそろもう一冊買います。サイバネティクスによる強化外骨格を身にまとった少女たちが己の信念の為・愛の為・失った物を取り戻す為に、近未来のウィーンに狡知奸計をもって迫る極めて強力なテロリスト達と戦う物語で、冲方丁のエッセンスとも言うべき「失われた魂の再生」というテーマが熱核爆弾並みの密度で詰め込まれているハイスピード&エモーショナルでスタイリッシュな作品です。元々は英語の表現技法を日本語に独特の形で取り込んだ「クランチ文体」と呼ばれるかなり特殊な文体で書いてあるため、ライトノベルながら著しく人を選ぶ傾向の強い作品ですが、一度慣れ親しんでしまうとスピード感でブーストされた読書体験のサージする感覚が味わえます。
この辺りになると極限まで読書意欲がブーストされていて、意識しなくともずーっと本を読んでいるぐらいに極端な本好きになりました。高校時代は授業すらサボって本を読み続けていたので成績は最悪でした。あの頃の自分にとっては「知的環境」って本の中にしかなかったし、普段の授業がクソみたいに退屈極まりないものに見えていた事は真実です。
その頃です、高校の図書館に「ひきこもりの国」なる謎の本が置いてあって、興味から手に取りました。
まあこれが何かすごい勢いで日本社会を批判する謎の本で、あまりに痛烈に日本社会を非難してるから途中から疑ってかかるようになって、この本が反面教師みたいになって「批判的に本を読む」という作業をやり始めるようになりました。まあこの本は半分ぐらいは言ってる事は正しくて、日本社会ひいては日本人という国民性の問題点を自覚するという意味では非常にためになった本ですね。ここから社会を批判的に見つめるという能力が開けて行ったと言っても過言ではないです。
で浪人時代に入り、やっと家族から文句を言われず好きな本を好き勝手買えるようになって、ますます酷いペースで活字中毒が進行しました。この頃には海外SF・海外ファンタジー・ライトノベルの他に文学にも少しずつ触れるようになってきて、安倍公房の「友達・棒になった男」と「砂の女」を読んだり、アニメ版「攻殻機動隊」に触発されたところからサリンジャーを読み始めたりしました。すると不思議なもので嘗て現代文の教科書に書いてあった作品をもう一度読み返したくなって、太宰の「富嶽百景」なんかは未だに表現の美しさが大好きです。
「砂の女」は夭折の天才作家安部公房の強烈な洞察に基づく何とも嫌になる感じの話です。人間の意思が困難な環境に晒され続ける事で徐々に溶解し、形を失い、そして最後には当初そんな意思を持っていた事すら忘れてしまう。何とも非常に後味の悪い、読後感最悪の救いが無い作品ですが、恐ろしいほどの洞察力に基づいて描かれる人間の本質的な姿は読んでいて考えさせられるものがあります。
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結構色々な人に変な顔をされますが、私の中では「アニメ」と「文学」って地続きのもので、アニメを見るとその漫画版や小説版も読みたくなるし、劇中でキーアイテムとして文学作品が使われているような場合は尚の事です。「攻殻機動隊S.A.C.」作中では「笑い男」と呼ばれる超ウィザード級のハッカーが現れ、「ライ麦畑でつかまえて」に登場するセリフに沿った事件が描かれます。事件を追う公安九課の人物がまんま白水Uブックス版の「ライ麦畑でつかまえて」を読み込んでいるシーンがあり、これは自分で読んでみないと何が展開されているのかわからんと思った所からサリンジャーを読み始めました。正直「ナイン・ストーリーズ」の方は良く分かりませんでしたが、「ライ麦畑でつかまえて」についてはすごく気に入りました。若者特有のやるせなさというか鬱積した感覚が見事なまでに表現されていて、若い内にこの作品で出会えてよかったと思うぐらいいい作品でした。
太宰は「富嶽百景」が最高に好きです。何と言ってもその表現の美しさが見事で、富士山の雄大なる景色の下で懊悩する卑小な自分自身の姿や、それでも何とかして前に進もうとする姿が部分的に自分と重なったのかもしれません。これ以降太宰にドハマりして、短編を中心に結構いろいろ読んでいます。(しかし「人間失格」は読んでいない)
「化物語」に出会ったのも初出は浪人時代でしたかね。本ばかりでも面白くないから漫画を読もうと思って最初に見つけたのが「夜桜四重奏」だったり「ARIA」だったりしたのもこの時期です。
- 作者: 西尾維新,VOFAN
- 出版社/メーカー: 講談社
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「化物語」はアニメ版から入ったのだったか原作小説から入ったのかもう定かではありません。この頃には既に声優オタクだった事も災いして、アニメ版での神谷浩史によるセリフの読み上げが丸っきり原作小説を読んでいる時も脳内再生されて、非常に速やかに読み切りました。後々に「少女不十分」を読んで明確化される事ですけど、この「筋が通っていない、歪みを抱えた人物たちが、それでも歪みと付き合いながら幸せになろうとする」という筋書きが強烈に大好きで、以降物語シリーズは全巻欠かさず通読しているし、アニメシリーズも全て見ています。
「夜桜四重奏」は完全にイラスト買いです。筋書きは何やらよく分かりませんが、とりあえず明るい雰囲気とキャッチーでスタイリッシュな作画だけで読む価値があります。フェチ心をくすぐる妙なエロさ満載のキャラクター達と、スタイリッシュにカッコよく動き回る作画が大好きです。これ以降漫画作品については「筋書よりも画としての魅力」を重視して買うようになりました。
「ARIA」は謂わずとしれた伝説的精神安定剤です。精神安定効果がある漫画といったらもう本作を差し置いて他にありません。美しいSFの近未来、観光地で流れるゆっくりとした時間、魅力的な登場人物と明るく快活な主人公、もう何もかもが美しくて全てが癒しです。アニメ版ではその「ゆったり感」がことさらに強調される作りになっていて、ますます癒されます。忙しい現代社会の中で、この作品を読んだり視たりしている間だけは時間がゆっくりになるような、伝説的作品です。
で大学に入って友人から「ぼくらの」を全巻貸してもらって読んだところから段々鬱作品の傾向が強まってきます。この頃読んだのが「空の境界」、「MISSING」、「ヨルムンガンド」とかそのあたり。
これはもう解説不要でしょうかね。「ARIA」の次にこれを紹介するのは落差が激しすぎて落下死しかねないぐらいに鬱すぎる作品です。平和をのうのうと謳歌して暮らしている私たちの裏側には、血で血を争って命を散らしている人々が存在するという事を痛感させられるという点では、後に紹介する伊藤計劃の作品とも共通する部分がありますね。
切なくて切なくて涙を流したくて仕方が無いのに、胸が詰まってしまって涙を流せない、なんて、そんな経験した事ありますか。私はこの本を読んでそういう切なすぎて苦しい感覚を初めて味わいました。平易で読み易い言葉で、人が生きてく上での哀しみや切なさを体感できます。
母がいつも見ている「王様のブランチ」の企画で「この漫画はすごい」と紹介されていたので読み始めました。この独特のタッチの画だけでも買うに値すると思いましたけど、ストーリーも中々クールで好きですね。あれよあれよと言う間にアニメ化されていてびっくりしました。
そこから大学で数年過ごしてやっと理系として覚醒してきたのか、少しずつ科学系の読書に傾斜し始めます。
複雑系―科学革命の震源地・サンタフェ研究所の天才たち (新潮文庫)
- 作者: M.ミッチェルワールドロップ,Mitchell M. Waldrop,田中三彦,遠山峻征
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2000/05
- メディア: 文庫
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最初に「これだ!」という手ごたえがあったのはこの本ですね。元々生命科学系やシステム理論の話には興味を持っていましたが、明確に面白さを感じさせてくれたのはこれが初めてですね。実際に生命や社会システムなどに応用可能なシステムモデルが数式を一切使わずに簡単に色々説明されており、システム学的な考え方という物はどういう風に象られていったのかが良く分かります。
まあしかし元々文系の脳みそが強いのか、理系の本を一冊読むと必ずその後文系の本に回帰したくなります。この頃に「げんしけん」にドハマりしました。
大学の現代視覚文化研究会というオタサーで繰り広げられる人間関係の面白い事。アニメ版第一期では水橋かおり、第二期では山本希望演じる荻上さんの可愛さが爆裂。自分は「日本で一番忙しい」と称される某暗黒大学の人間なのでこんな楽しげな大学生活は微塵も存在していませんでした。世の中にはこういう楽しげな大学時代を送る人もいるのだなあと羨ましくなりますね。
それからやはり理系と文系が融合したような作品にドハマりするらしく、「スワロウテイル」シリーズは既刊全て読み込みました。
ナノマシンによるテクノロジーの強烈な発達した未来都市が主な舞台となる本作。まさに「ナノマシン・バイオパンク」とでも言うべきナノテクノロジー、バイオテクノロジー、サイバネティクス、心理学、政治学などが複雑に絡み合った光り輝く世界観で展開されるコテコテにクールなライトノベル型のハードSFです。中々理系のフレームワークだけでは捉えきれない文系知識や政治の駆け引きなどが出てくるのでライトな見かけに反して結構読みごたえがあります。
さて段々理系読書が深化してきた所で伊藤計劃に手を付けました。
「ハーモニー」は天才作家伊藤計劃が最後に遺した作品です。行き届いた福祉社会、完成された「調和」の社会は、現代の日本人が意識的にも無意識的にも求めようとしている社会の完成された姿です。しかしその形はどこか歪で、生命が生命らしい輝きを持つ事を封じた社会です。伊藤計劃はその温かくも冷たい舞台設定の中で、強烈に輝き続ける疑問と哲学を読者にぶつけてくれます。読後感は非常に暗くも、振り返って現代の日本社会を見た時に深く深く考える事があると気づかされます。
「虐殺器官」についても同様ですが、こちらはまだ理解しきれていない部分があるのでそのうち再読します。アメリカ軍に新設された情報を司る軍事部門の一つで兵員として勤めている主人公は、平和な世界が大量に含有するおぞましい欺瞞の一つ一つに気付いて行き・・・。これも前述と同じく「平和で安全安心な世界」なんていうお題目がどれ程酷い欺瞞でできているかを読者に痛感させる内容です。
さてさて長々書き連ねてきました。ここまでが私の読書遍歴です。本当は紹介したい本がまだ何百冊もありますけど、それを全部書いて行ったら大変なことになるのでとりあえず印象に残った物から。
別に私は「意識高い系」だから読書してるとか、知識や教養を付けたいがために読書してるんじゃないんですよ。面白い本が読みたいから読書しているだけなのです。真に面白い本を読むと、その後自分が社会に対して向ける目線が少し変わります。何の知識も教養も得られなくて構いません。本を読むことではなく「本を読んで変化した目線で世界を視る事」によって知識や教養が蓄積されてゆくのです。よく「俺は新書しか読まん」みたいな事をドヤ顔で言い出す人がいるんですけど、そういう目的ではないんですよ。文学、SF、ファンタジー、こういった作品に親しむことで、世界の見え方が少しずつ変わってきます。すると今までは全く見えなかった世界の混乱や、複雑性の中の光や影が少しずつ見えてくるようになります。それこそが涵養すべき教養というものなんじゃないかと私は考えています。
私はそういった世界の見え方が複数あってもいいと思うし、あらゆる価値観の中で対比取捨選択しながら自分の思想を構築していきたいのです。そのために私は本を読んでいます。決して勉学の為ではないし、知識を溜め込む事が目的なのでもありません。
私にとって読書はもはや、飯を食ったり眠ったりする事と全く同等なレベルで当たり前の事です。それを奇異な目線で見つめられる事が凄く気に障ったというのは紛れもない真実で、だからこんな記事にして振り返ってみたりするのです。私がここで紹介した作品はごくごく一部に過ぎません。世の中には、もっととびきり面白い作品が星の数ほどもあります。それらの内どれか一冊でも手に取ってみて、その本の世界に引き込まれてくれればうれしい所です。
私の世界は本によって変成し続け、次々新しくなってゆくのです。