難しい、と感じています。
自分の中には何かの思念がある、と感じます。それは誰かに対する愛と憎悪であったり、この社会を見通そうとする意思であったり、何かがあるような気はしています。しかしそれを言語化しろと言われると途端に全く沈黙するしかなくなってしまう。思うに、「考える才能」とは「言語化する才能」と密接に結びついていて、思考力とは思考力単体そのものだけでは成立しない物なのです。
そういう事を考えているといつまで経っても話が先に進みません。言語化できないんだから当然です。例えば、私がアニメを見るのは、言語化という一つの限界を最初からすっ飛ばして、実写化不可能な世界観や概念の全てをビジュアル化する所にある種の情報の形を見るからだと思います。
今回はいよいよ私的お待ちかねオーバーロードの紹介回。
正直何が何だったか覚えていない、というより、最終回の内容が酷すぎて記憶を自発的に消去してしまったような覚えがある。謎解き系のストーリーなのかと思いきや謎解きではなく、特殊なイロモノ設定を色々とぶち込みまくって乱歩感を表現しようとしたけど失敗した絶望が凄い。
小山力也演じるとらと新人声優畠中祐の演じるうしお。ヒロインには新人声優から若手のホープへと昇格した頃の小松未可子という盤石の体制でお送りする名作。如何せんちょっと古い作品なので、ストーリー展開の古さが目に付いてしまって私的にはあまり好きではなかったんだけど、客観的に見たらかなり完成度は高い作品だと思う。
これまで「自衛隊アニメ」と言うと途端に政治臭が凄かったり、とりあえず反戦運動家御用達みたいな内容になっていたけれど、これは違う。ちゃんと「ファンタジー×自衛隊」を政治抜きでやってくれるという点で色々と感慨深い。そういう意味では戦国自衛隊に近いのか?
突如現れたゲートという回廊を通じて異世界の軍勢が日本に襲来し、東京だかどこだかのど真ん中で異世界人に日本人が襲われるという事件が発生、日本政府は自衛権発動の要件を満たしたとしてゲートの先に広がる異世界に自衛隊を派遣する。ゲートの向こうはファンタジーな剣と魔法の世界、混乱する異世界の住人たちと共闘したり、時に刃を交えたりしながら、自衛官一人一人が一人の人間として異世界の人々と接触していく。その中で異世界にも民族差別があったり、種族間の苛烈な闘争と対立の歴史があったりと現代の人間社会にも通じる困難に出くわしていく。
典型的な「これまでに存在した物語システムに現代風の要素を投げ込んでリニューアルする型」の物語である。自衛隊物に異世界転移(移動?)を始めとするライトノベル的要素を盛り込み、自衛官でありながら熱狂的なオタクで「仕事は趣味のため」と公言してはばからない主人公(CV.諏訪部順一)に対して東山奈央、種田梨沙、イカちゃんという三ヒロイン体制でハーレム型の人間関係を構築する。
ヒロインはどれも皆可愛いものの、私的には天才的な魔法使いの少女レレイ(CV.東山くん)が一番安定感があって好き。というかほかの二人に安定感が無さ過ぎる。
下ネタという概念が存在しない退屈な世界
アンチテーゼ・コミカル。石上静香覚醒の時。
下ネタお色気その他全ての「不健全」とされる要素がおおよそ全部禁止になった近未来の日本。成績優秀で眉目秀麗な学校のマドンナは、実は社会にエロと下ネタを復活させるために暗躍(?)する下ネタテロリストである。パンツを被りアホみたいな薄着で走り回る美女テロリストである彼女はある日一人のウブで童貞な男子と出会い…、
みたいな話。
「不健全なものを封じて健全な社会を」という言説はずっと昔からあるものだが、そうして不健全なものを徹底して封じた結果現代日本の若者は恋愛を必要以上に怖がるようになり、未婚率の急激な上昇と破滅的な少子化…みたいな話が今現在の日本社会を取り巻く自己欺瞞として現実に存在する(もっとも少子化については私は養老孟がかつて唱えていた都市化との関係や、経済情勢的な問題の方が大きいと考えているけど)。
そういった欺瞞に対して、「もうYou、やりたいようにやっちゃえヨ!」と明朗かつおバカでコミカルなノリで反抗する。作中にはいろいろな形でエロや下ネタが提案され、それを熱烈に広めようとするヒロインのキャラクター造型に石上静香の色っぽさとアホさを同時に実現しうる演技がぴったり合う。
Charlotte
佐倉綾音ファンならば見ないわけにはいかないあやねるファン巡礼の地の一つである。
超能力に覚醒した少年少女たち、厳重な監視の下で彼らを閉じ込めておこうとする大人たちと、それに抗う子供たち。割と何度も見たような構図の話だが、Keyのストーリーライターが原作・脚本担当という気合の入りっぷりなのでそれなりにちゃんとできている。可愛い佐倉綾音キャラが見たければ問答無用で見ても良いぐらいには完成されていると思う。
六花の勇者って言ってるのに七人いるじゃねーか!誰か一人敵のスパイだ!的な話だったような気はするんだけど、その後どうなったんだかよく分からない。勇者という割に世界を救う的なノリはあまりなく、七人の中に混じっているらしいスパイで偽物の勇者を何とかして暴き出そうとして勇者同士が戦います、みたいな話で終わる。
魔物と人間の混血の少女(CV.悠木碧)の人気が異常に高い。途中で彼女に焦点が当たる話があるが、そこでとりあえずもう悠木碧のレベルが高すぎて碧ちゃん劇場になってしまう。
はやみんマジ天使!はやみんマジ天使!はやみんマジ天使!はやみんマジ天使!
「はやみんマジ天使」という言葉を実証した早見沙織による早見沙織の早見沙織作品。はやみん病患者ならば絶対に見なければならない。
赤い髪なのに白雪とかいう公孫竜が発狂しそうな名前の少女(CV.はやみん)は祖母の跡を継いで一人で薬品店を切り盛りする薬師である。野をかけ山をかけ薬草を集めては街の人々のために薬を作り続ける彼女であったが、ある日ひょんなことから王国の若き王子様の目に留まってしまい…。
健全で清く正しい純少女漫画的なファンタジー恋愛モノを演じるのがはやみんと来れば、これ以上の人選は無いだろう。あんまり派手な物語ではなく寧ろ全体としては地味な印象を受けるが、一方でジブリ的な安定感と安心感があるという評価も多い。王子様と薬師という身分違いの恋という少女漫画的要素、立場上敵も多い王子をひたむきに支える努力家で明るいヒロイン像という「良妻賢母」的なキャラクター像など、とりあえず「安心してはやみんの声を聴ける要素」は満漢全席で揃っている。
はやみんマジ天使。
ドハマりして原作小説まで全巻買っちゃったシリーズ。
今回のアニメまとめはオーバーロードだけ紹介しても良かったんじゃないかというぐらいには書きたい事があるので、その内特集記事でも書こう。三期も放送されるしね!
エポックメイキング的に新しい。転生モノと言えばこれまでは「主人公がとりあえずゲーム世界などの異世界に転生して、とりあえず異世界でハーレム的な感じになる」という定番筋書きがド定番であったが、今度は違う。
なんと主人公は転生した先で骸骨姿の大魔術師である。物理攻撃・魔法攻撃を問わず低レベルの攻撃は全無効化とかいうアホみたいに強力な能力を持つ主人公はデフォルトで最強者であり、強力な魔獣や悪魔を配下に複数従える大ギルド「アインズ・ウール・ゴウン」の支配者である。最強に次ぐ最強、満漢全席で全ての俺TUEEEE要素が揃い踏みしすぎである。
副官は爆乳で能力的にも超優秀(だが性格が残念)な美女(CV.原由実)で、その他の部下たちも一人一人が激烈な個性と強大な能力の持ち主。「俺TUEEEE」に留まっていたこれまでの異世界転生モノを「俺たちTUEEEE」にまで引き上げて語る。
それもそのはず、この世界の住人達はどれだけの武勇の持ち主であっても大体40レベルぐらいが限界なのに対して、主人公と主要な部下たちは全員100レベル、最も弱い者たちでも戦闘員であれば40レベル以上は確実に到達しているとかいう設定である。従って主人公たちにとってはどんな強大な敵も赤子の手をひねる以下、息を吸うように殺し、息を吐くように従える事ができるのだ。
その意味で今作の主人公は「最強のヒーロー」ではなく「最大の巨悪」として世界に君臨する。一歩歩けば誰もがひれ伏し、二歩目で国を滅ぼし従属させ、三歩歩けば大虐殺。そんな恐ろしい超越的な巨悪として真の意味での「魔王」という主人公の姿、そして絶対強者である魔王に付き従う大悪魔・大魔人・大魔獣たち。長らく日本のファンタジーにおいてお茶を濁されてきた「本物の魔王」を真正面から本気で描き出す事に成功しているのだ。
しかも主人公は転生前、このゲーム世界でPVP(対人戦闘)の名手だったとかいうチートすぎるスキルの持ち主である。従って相手がどう考え攻撃してくるかを予測し、その裏をかく謀略、それによる構築的な戦闘スタイルの天才だ。アニメ版でも原作小説でも「俺にはそんな能力なんて無い…」と常に自虐的な主人公であるが、主人公と同等の能力を持っていながら部下たちが彼に絶対の服従を誓っているのはやはりその運の良さも合いまった謀略や構築的な思考力の高さによるところがとても大きい。
元は転生前の主人公たち、そして主人公の友人たちが作り出したNPCキャラであるはずの魔獣・悪魔・魔人たちはそれぞれがそれぞれの意思と思考をもって動く本物の人格となった。外見も違えば能力的にも全く異なり、思想も違えば性格も違う、曲者ぞろいの部下たちは主人公も頭を悩ませる程の強大さと意志の強さを持っており、彼ら彼女らをガイコツ姿の主人公がどうリーダーシップを発揮してまとめて行くかも本作の見所の一つである。
個人的にはアルベド一択。爆乳で主人公の事が大好き(ヤンデレ)、知謀や政治センスにも長ける有能な副官で、戦闘能力的には防御・護衛・守護系能力の極限超越者とかいうこれまたアホみたいなチートキャラ。演者としての原由実の特性である「息の多いセクシーな女性の声」というものがばっちりハマっている。
その他キャスティングされている声優も全員が実力派若手と実力派ベテランであり、新人声優が一人もいない(一人だけアニメであまり声を聴かない映画吹替え畑の実力派声優が参加しているのでアニメでは聞けない声も聴ける)。声優アニメ的に見ても気合の入りっぷりが凄い。
音楽的にも「けものフレンズ」で一躍有名になった大石昌良がボーカルを務めTom-H@ckと作るOxTがOPを担当し、Tom-H@ck渾身の新進気鋭の音楽ユニットであるMYTH&ROIDがEDを担当する。聞き応え抜群なロックサウンドに乗せて歌われるダークファンタジーの世界観が何とも心地よい。
褒め殺しに褒めすぎたので、最後にこの作品の弱点と思われる部分を。
定期的に作画がちょっと危うくなりそうなギリギリのバランスで保っていると思われるシーンが散見される。作画にこだわりまくる作画厨はこの作品をどう評価するかというと微妙ではないかな。その他原作小説で重要なシーンをサクッと飛ばしてしまったり、原作を読んでいれば脚本にも少々問題がある事が分かる。
まあ、そういう細かい問題点を差っ引いても、元々の物語の面白さが抜群すぎる上に演出が極めて巧みなのでアニメとしての完成度もメチャメチャ高い。良い物語は良い演出によって完成されるということの見本のような演出が色々と盛り込まれているので、やはり総評としてはアニメ史に残る作品に数えて良いんじゃなかろうか。