垂直都市に降る雨

東大院卒が綴る思索の影_記事の内容は全て個人の意見です。

自分の見たアニメを整理する回:16

私がよく読んでいる某社会評論ブログが「一週間一記事更新を目指していたけど、それも最近グダグダになって止めました~」と書いてありました。なるほど目標とはこういうグダグダな立て方をしても良いものかと思い、私も「一週間一記事更新したいなあと思ってるけど実際には知らん」を目標としていきたいと思います。「実際には知らん」なので、実際にどうなるかは知りません。

2014年夏季から。

 

グラスリップ

「グラスリップ」の画像検索結果グラスリップの悲劇とか言われている。抜群にこだわり抜いた作品群で高セールスを叩きだすP.A.Works伝説に初めてミスが生じた作品であるとかなんとか、とりあえず悪評はよく聞くが、実際にどうなのかは知らない。はやみん演じる全裸系ヒロインがリボンだけ付けて全裸で登場するとかいう謎のシーンぐらいまで見たが、それ以降全然見てない。


白銀の意思 アルジェヴォルン

「アルジェヴォルン」の画像検索結果

割とロボットのデザインはカッコいいんだホントに。ただそのロボットたちが活躍するのが機工ファンタジーみたいな謎の世界観である事とか、女性パイロットのパイロットスーツの胸部にまたいつも通り乳袋とか言われるあの謎の構造が盛大に作られていた時点で「ロボットデザインは良いのにキャラデザがどうも…」みたいな部分がすっごい気になって見るのをやめてしまった。


アルドノア・ゼロ

関連画像現代ロボットアニメを見るならば絶対に欠かす事ができない名作だと個人的には思っている。デザイン的な意味でも脚本的な意味でも、ストーリー構成全体としても音楽としても、総合的に極めてレベルが高い。「君が見る夢は古いインクで紙に書いた祈りのよう」と始まるKalafinaの気合の入ったオープニングに始まり、古き良きメカデザイン感を踏襲した主人公たち陣営のロボットと流線形を基調とした新奇感の強いメカデザインとなっている敵陣営のロボットたちが互いの信念をかけてぶつかり合う。

関連画像
関連画像(上が主人公たち地球陣営のロボット、下が敵である火星陣営のロボット)
火星に人類が移民した遥かな未来、火星に移住した人々は火星の過酷すぎる環境に苦しみながらも「アルドノア」と呼ばれる不思議なエネルギーを発見し、それによって火星に自分たちの居住権、そして国家を築く事に成功する。
アルドノアのエネルギーによって作られた火星人類の国家は貴族社会であり、強力なテクノロジーを支配する技術貴族たちが貴族として民を実力統治する厳格な社会体制である。火星人民の公正で平等な社会の守り手として君臨する貴族たちは人民の尊敬を一心に集め、彼らの生活に責任を持つ存在であり、厳格ながらも理想的な貴族統治社会が築かれているのだ。
彼ら貴族たちは過酷な環境で働く人民の生活を向上させるためには「かつての自分たちを排斥した青き星」である地球への侵攻が必要であると考えるようになり、やがて戦いの火ぶたが切って落とされる。一方その頃平和の中で過ごしていた地球の人々は突如宣言させる火星からの宣戦布告、地球に舞い降りる軌道貴族たちの搭乗する戦略級人型兵器に壊滅的な混乱状態となる。
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本作の面白さはストーリーを担当する虚淵玄らしい「正義と悪を規定しない戦い」が展開されるところにある。その為にダブル主人公制となっており、地球側では一人のパイロット候補生に過ぎなかった界塚 伊奈帆(かいづか いなほ、上図右、CV.花江夏樹)が天才的な策略と操縦技術で活躍し、火星側では貴族の傍仕えの少年から貴族位にまで成り上がるスレイン・トロイヤード(上図左、CV.小野賢章)がストーリーを動かして行く。
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二人の主人公を動かす中心軸となるのは、ヒロインであるアセイラム姫(CV.雨宮天)である。アルドノアを発見した火星国家開祖の血を引く王族であるアセイラムは地球と火星の間に多くの血が流れる事を嫌い、どうにかして戦争を和平終結させようと尽力するのであるが…。
「ザーツバルム」の画像検索結果
他の虚淵作品と同じく、今作も本当に「正義も悪も存在しない」という考え方が徹底されている。飽くまで平和な地球圏に閉じこもろうとする地球人類、人民の生活向上を背負う責任者として資源豊かな地球への侵攻は必須と考える火星貴族たち、両者の間で何とかバランスを取りつつ平和な終戦へ事態を引っ張ろうとするアセイラム姫という三つの立場はどれが正義でどれが悪というわけではなく、それぞれに三者三様の思想と利害関係が存在する事をよく考えなければならない。
「敵陣営が凄くカッコいい」というのは名作の一つの条件みたいなもんであるが、本作で描かれる貴族たちは皆惚れ惚れするほどカッコいい思想哲学と誇りの持ち主であり、平和に閉じこもろうとする地球人類よりも下手すると火星貴族たちの方が遥かにカッコいい。火星貴族の重鎮の一人であるザーツバルム伯爵(CV.大川透)もその一人であり、主人公であるスレインを物語の早い段階から終盤まで育て上げ、最後には自らの思想哲学を以てスレインの前に「超えてゆくべき屍」として散るというカッコよすぎる貴族っぷりを披露してくれる。「地球を侵略する事で資源を得て、火星人民の過酷な生活を少しでも向上させたい」という思想を正義とする火星の貴族たちからすれば平和を望むアセイラム姫などは寧ろ邪魔者である。飽くまでも姫の命を第一に考えるスレインとザーツバルム卿の考え方は少しずつ対立してゆき…とまた登場人物が色々な表情を見せ、火星勢力も一枚岩ではない所がめちゃめちゃ面白い。
ロボットアニメであり、ロボットのカッコよさはもちろんの事であるが、それ以上に「人がカッコいい物語」として見る価値ありである。虚淵玄的な「理想的にカッコいい人々」が大活躍する作品として一興。